ピロリ菌検査について
ピロリ感染の保険適用に関して
慢性胃炎のあるピロリ感染は保険で除菌できるようになりました。 平成25年、2月21日から可能となりました。
ただし除菌のためには必ず内視鏡検査が必要のため、内視鏡検査のおこなえる施設で胃カメラをおこない慢性胃炎があることを確認し、その後除菌治療が可能となります。
胃癌の予防効果としてはピロリの除菌が最も効果が高いため、今後の医療に期待が持てます。
除菌希望の方は胃カメラの予約を電話でしてください。
その時除菌希望であることを伝えてください。
ヘリコバクターピロリ
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とは?
ピロリ菌は正式な名称をヘリコバクター・ピロリといいます。「ヘリコ」はギリシャ語の「らせん」、「バクター」はバクテリア(細菌)という意味です。「ピロリ」は胃の出口付近のこと「pylorus」を意味しています。元来、この菌が胃の出口付近の「ピロルス」から多く発見されたため、この名前がついたようです。身近な例でヘリコというと「ヘリコプター」です。ヘリコプターの名前もギリシャ語のらせん「helico」と翼「pteron」に由来しているのです。ピロリ菌の写真を見ると、上にある数本の長い鞭毛がヘリコプターの翼に似ていませんか?
ピロリ菌の感染時期
実は、いつ感染するのかははっきりわかっていません。
しかし、以下の事実から、ほとんどの人が乳幼児期に感染したと考えられています。
感染時期とその根拠
- 大人になってから感染しても、風邪のように一過性で治ることが多い
- 乳幼児期に感染すると、その後慢性感染に移行しやすい
- 似た傾向をもつウイルスの例:B型肝炎ウイルス
このため、ピロリ菌も同様に乳幼児期に感染してそのまま定着したと考えるのが自然です。
感染経路
感染のメカニズムについても、明確なことはわかっていませんが、以下のような説があります。
日本における感染率(年齢別)
| 年齢層 | 感染率の目安 |
|---|---|
| 10~20歳 | 約20% |
| 50歳以上 | 約70~80% |
これは、戦前・戦後の衛生状態が悪かった時代に乳幼児期を過ごした世代の感染率が高いことを示しています。
また乳幼児期に食事の与え方も今の40歳代を境に大きく変化しており、40歳以上の世代は親が噛み砕いた食事を子供に与えている人が多かったですが、今の40歳代より下の世代では、虫歯を気にしてそのようなことをしなくなっています。
このため、衛生状態の悪い水から感染したのではないかという意見もありますが、自分はヘリコバクター・ピロリは自然環境においては動物の胃内だけで増殖可能であり、それ以外の場所では、生きたらせん菌の形では長時間生残することは出来ないという事実も考えてあわせると、人から人へ直接感染したもの、感染している親との小児期の濃密な接触(離乳食の口移しなど)が多いのではないかと思っています。
最近よくあるピロリ菌の質問
ピロリ菌は除菌したほうがよいの?
ピロリ菌の保険適応は?
ピロリ菌除菌の方法は?
ピロリ菌と喫煙、禁煙治療について
たばこ税の引き上げをきっかけに、「今こそ禁煙を始めたい」という声が周囲で多く聞かれるようになりました。当院でもその声に応えるかたちで、禁煙治療を開始しました。
喫煙とピロリ菌感染ー胃がんとの関連性
興味深い研究結果があります。
九州大学・土井康文助教らの研究によると、喫煙とピロリ菌感染の有無による胃がん発症リスクには以下のような差が見られました。
ハザード比(胃がん発症リスク)
| 状態 | ハザード比(基準:感染なし・非喫煙) |
|---|---|
| 非感染 × 喫煙 | 5.82倍 |
| ピロリ感染 × 非喫煙 | 6.93倍 |
| ピロリ感染 × 喫煙 | 11.41倍 |
ピロリ菌感染と喫煙は、それぞれ単独でも胃がんのリスクを高めますが、両方が重なるとリスクはさらに増加します。
ピロリ菌除菌と禁煙治療ー保険適用の違い
- ピロリ菌除菌:保険適用には条件があり、制限があります。
- 禁煙治療:保険適用となっており、治療薬の開発も進んで比較的容易に取り組めるようになっています。
禁煙は「がんの一次予防」
ピロリ菌は主に胃がんのリスク因子ですが、喫煙はそれにとどまりません。以下は喫煙によるがんリスクの増加例です。
- 肺がん
- 食道がん
- 咽頭・喉頭がん
- 腎臓がん(煙が届かない臓器にも影響)
喫煙は複数のがんの原因となる、強力なリスク因子です。
禁煙治療をご希望の方へ
禁煙は、がんの一次予防です。
これまできっかけがなかった方も、今こそ始めてみませんか?禁煙に興味のある方は、ぜひ外来へお越しください。
ピロリ菌と慢性胃炎、胃癌の関係について
ピロリ菌と胃がんの関係とは?
50歳以上の方の8割以上は、ピロリ菌に感染感染しています。
- 多くは幼少期に感染し、そのまま持続
- 感染期間=自分の年齢とほぼ同じ
- 長期間の感染により、慢性胃炎が進行
これだけ長い期間感染していれば、胃に変化が現れます。慢性胃炎のなかでも、萎縮性胃炎と呼ばれる胃炎になっている方がほとんどです。萎縮というのは、胃の内側にある粘膜が薄くなっている状態です。
胃の萎縮度とがん発症リスクの上昇
萎縮性胃炎があると胃癌発症の危険率が高まるということが知られています。
胃の萎縮度とがん発症リスク(10年観察)
| 萎縮の程度 | リスク倍率(軽度萎縮を1とした場合) |
|---|---|
| 軽度 | 1 |
| 中等度 | —(中間) |
| 高度 | 約6倍 |
ピロリ菌の除菌
除菌によって以下のような胃がんリスクを抑制できると期待されています。
- 除菌に成功すると萎縮の進行が止まる
- 最近の研究では萎縮が一部改善する可能性も報告
このため、日本ヘリコバクター学会はピロリ菌の除菌をすべてのピロリ感染者に勧めていますが、現在のところある一定の基準を満たさないと保険診療では除菌できません。医師会、ヘリコバクター学会から厚生労働省に働きかけていますが、まだピロリ菌感染のみでは、保険診療で除菌治療をすることはできないのが現実です。
胃がん予防の第一歩として…
ご自身の胃の状態を知ることは、将来のリスク回避につながります。ピロリ菌感染が気になる方は、お気軽にご相談ください。